元米空挺中尉がアフガン人殺害で禁固19年

2015.1.15


 military.comに よれば、第82空挺師団長リチャード・D・クラーク少将(Maj. Gen. Richard D. Clarke)は、アフガニスタンでアフガン人2人を殺害した罪で元陸軍将校を刑務所に送る決定をしました。

 クラーク少将はクリント・ローレンス元中尉(1st Lt. Clint Lorance)からの寛大な措置の要請を検討していました。ローレンス元中尉は2012年夏にパトロール中、部下にアフガン人3人を撃つよう命じた件で、2013 年夏にフォート・ブラッグ(Fort Bragg)で軍事裁判にかけられました。2人が殺され、3人が逃げ去りました。

 クラーク少将は禁固20年の有罪判決から1年を減刑したものの、有罪判決と処罰は堅持したと、同基地の公報は言いま した。「リチャード・クラーク少将は、8月、10月、11月、12月に提出された寛大な措置の要請を含めて、慎重にこの 裁判の事実を評価しました」と、第18空挺軍団のクリスタル・ボーリング少佐(Maj. Crystal Boring)は言いました。「事件を詳しく検討した後で、彼は軍事裁判陪審団からの有罪判決を堅持し、禁固20年の元の判決から審理後の遅れを理由に1年を減刑すること を命じました。本件は今、米陸軍刑事控訴裁へ送られています」。

 1年間の減刑は、ローレンスの弁護士が陸軍に、ローレンスの寛大な措置の要請を検討するのに時間がかかりすぎている と主張した後で行われました。ローレンスの有罪判決が出てから17ヶ月間が経っていました。クラーク少将は彼が第82空 挺師団の指揮を執った時、10月に本件を受理しました。

 ローレンスの起訴と有罪判決は論争の的でした。彼は兵士を攻撃のために偵察していたり、爆弾を設置するために接近し ていたかも知れない敵から守るために合法的に命令したと主張しました。検察官はオートバイに乗った男3人は、武器や携帯 電話、2ウェイ無線機を所持するなどの脅威を示しておらず、攻撃を命じる戦闘に入る時の規則である軍の交戦規定に違反し ていたと言いました。検察官はローレンスがこの事件と数日間でアフガン住民を撃たせたいくつかの他の命令により、無謀に も兵士とアメリカ任務を危険にさらしたと言いました。これらの発砲は地元民を米軍に対抗するよう転向させる危険を冒した と検察官は言いました。

 ローレンスの弁護士、ジョン・N・マーハ(John N. Maher)は、オートバイの男たちとアフガンで爆弾事件に関与した者たちが接触した証拠を手に入れたと言い、彼らの死は正当化されることを示すと言いました。マーハの証 拠は殺された2人に直接関係しませんでした。マーハの新しい証拠は、殺された2人の兄弟と叔父といわれる第3の男が、彼 がアメリカ人に攻撃された2ヶ月後に爆弾事件に関与したことを示します。


 記事のほぼ全部を紹介しました。

 これは珍しい決定です。米軍が戦闘中の攻撃について、脅威がない者を射殺した件で将校を有罪にしたのです。イラク人 24人を殺したハディーサ事件では、爆弾攻撃を受けた後、米兵たちは家の中で寝ていた付近住民だけでなく、たまたま通り かかったタクシーの運転手と乗客全員まで殺しています(過去の記事はこちら )。 海兵隊は主犯のフランク・ウートリッチ2等軍曹(Staff Sgt. Frank Wuterich)を処罰することを嫌がりました。その結果、殺人の嫌疑は故殺罪(manslaughter)と加重暴行に格下げされました。ウートリッチは職務怠慢だけ を認め、有罪判決を受けたものの、3ヶ月間の給与3分の2の没収と二等兵への降格という軽い処罰で済みました。

 ローレンスに寛大な措置を要請する署名活動は32,000人分を、オンライン署名では52,500人分が集まったと いいます。それでも、禁固19年という処罰が下りました。

 愛人に機密を漏洩させた疑いで起訴が勧告されているペトラエス元大将が余裕綽々なのに比較すると、大変な違いです (関連記事はこちら)。このように、米軍ではより下級の隊員が厳しく 処罰される傾向があります。また、事件が起きた時期、裁判が行われる時期によっても違いがあります。第2次大戦中に脱走 罪で死刑になったエディ・スロヴィク(Edward Donald Slovik)も、他に同じ罪で有罪判決を受けたのが49人もいたのに、彼だけが銃殺刑となりました。

 戦闘中に脅威を示したかどうかの判断はむずかしく、大抵の場合、無罪になります。明らかに故意に殺害したことが示さ れない限り、有罪判決にはならないものです。それだけ、アメリカでもアフガン戦に対する支持がなくなったということなの でしょう。

 


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