繰り返される軍治療施設での虐待事件

2015.3.20


 military.comによれば、米陸軍はフォート・フッド基地(Fort Hood)の兵士転換部隊(the Warrior Transition Unit: WTU)で戦傷者、病者、負傷者への最近の虐待の申し立てについて実態調査を開始しました。

 陸軍当局者は先週、WTUの兵士達が虐待、ハラスメント、職員による名誉を傷つける行為についての不満の報告に引き続き、統一軍紀法典第15-6条の調査がフォート・フッド基地で進行中だと認めました。訴えは最初にダラスモーニングニュースと地元KXAS-TVが報じました。

 フォート・フッドの報告は、テキサス州の3つの基地、フォート・フッド基地、フォート・ブリス基地(Fort Bliss)、フォート・サム・ヒューストン基地(Fort Sam Houston)のWTUで虐待の訴えに関する先月の議会公聴会に続きました。

 WTU司令部の指揮官、クリス・トナー大佐(Col. Chris Toner)は、仮病として兵士を扱う職員の訴えと、その他の虐待は2009〜2013年の陸軍オンブズマンの報告に基づいていると証言しました。確かに、そうした状況は存在しましたが、問題は対処され、陸軍の調査はWTUの兵士が十分に満足していることを示すと言いました。

 昨年、フォート・カーソン基地(Fort Carson)の部隊内問題行動クリニック(Embedded Behavioral Health clinic)での第15-6条の調査は、陸軍軍医総監パトリカ・ホロホ中将(Lt. Gen. Patrica Horoho)が戦闘員の治療改善に焦点を置くために、エバンス陸軍コミュニティ病院(the Evans Army Community Hospital)の解隊を命じる結果に終わりました。

 陸軍は2015会計年度の兵士の治療と転換計画予算は7億9150万ドルだと言いました。陸軍は全土にWTUを24ヶ所、ドイツに1ヶ所運営しています。陸軍のWTUと海軍、空軍、海兵隊の類似したプログラムは2007年にウォルター・リード陸軍病院(the Walter Reed Army Medical Center)で起きた患者へのネグレクトと粗悪な生活状況を巡る2007年のスキャンダルの後で開始されました。病院長は解任され、陸軍軍医総監は退役し、陸軍長官は辞任しました。

 病気、怪我、戦傷が少なくとも半年間の治療が必要になると、兵士はWTUに行くことが認められたり、配属されたりします。この計画の目標は兵士を任務に戻すか、復員軍人援護局の治療か民間の生活に移行させることです。

 WTU開設後、65,700人の兵士がWTUを通過し、29,400人以上が任務に復帰しています。現在、4,100人以上の兵士がWTUにおり、イラクとアフガニスタン戦争時期の2008年の12,400人以上の最高記録から減りました。ここ数ヵ月間、任務に戻った者の人数は著しく減少しました。昨年8月から1月15日までに723人の兵士がWTUから任務に戻りました。


 記事は一部を紹介しました。

 またかという気がします。この種の事件は当サイトで過去に繰り返し紹介してきました。それがまた起きているようです。

 簡単に言うと、施設職員が兵士が仮病だとみなし、対応が悪くなり、結果的に虐待になってしまうという構造があります。実際、軍病院は仮病の患者で一杯だという報告が2011年に報じられました(過去の記事はこちら)。

 一方で、ウォルター・リード陸軍病院の治療が劣悪だったというスキャンダルも有名です(過去の記事はこちら )。

 治療が半年以上になるかどうかで、兵士の処遇が大きく変わるため、兵士も知恵を巡らします。実際以上に状態が悪いように見せかけ、半年間、給料付きの休暇を楽しめるからです。患者を引き取った施設側は、医療記録よりも兵士の症状が軽いことに首を傾げ出し、治療に本気を出さないというわけです。

 一方で、こうした事態に巻き込まれ、受けるべき治療を受けられない兵士も出てきます。

 ここに国防に関する偽善が露呈しているといえます。人は愛国を叫び、兵士を戦場に送り出すものの、負傷して帰ってくると冷たいのです。負傷兵の治療は割と関心が向けられない分野となるのです。実際、復員軍人援護局の怠慢は何度も批判の的とされ、アーリントン国立軍人墓地でのスキャンダルも、まだ記憶に残っています。しかし、そういういい加減さを利用して、仮病で得をしようとする者たちもいます。何とも不思議な構図があるのが、この世界なのです。

 自衛官を世界で戦わせたい安倍政権は、こういう現状を知っているのでしょうか?。そういえば、チュニジアで銃撃テロがあり、日本人が死傷しましたね。海外でテロ攻撃があった時、政府は日本人を保護するとかなんとか言っていたはずですが、今回は何の発言も聞こえてきませんね。おかしいですよね。渡航勧告が出ていない場所に、クルーズツアーで立ち寄った人たちがテロの被害に遭ったのに、政府が動かないなんて。こんな調子で、日本政府は本当にテロ戦争に足を突っ込むつもりなのです。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.