一斉点検で熊本地震にヘリ使えずの嘘
読売新聞によれば、熊本地震の発生時、自衛隊の大型輸送ヘリコプター「CH-47」全約70機の約8割が、緊急点検などのために飛行できなかったことが、関係者への取材でわかった。
防衛省は、被災地への物資輸送が滞ると判断、米軍の支援を受けてオスプレイが投入されたという。
同省関係者によると、熊本地震発生の約1週間前、CH-47の点検で翼を回転させる部分近くに異常が見つかり、飛行を続けると事故が起こる恐れのあることが判明。自衛隊は全機の運用を中止して一斉点検を実施した。熊本地震後、自衛隊はCH-47の出動を決めたが、多くが点検中で、被災地での救助・救援活動には、10機程度しか稼働できなかったという。
ANNによれば、伊勢志摩サミットで、中部国際空港に到着する各国の要人を現地まで運ぶための自衛隊の部隊が発足しました。
陸上自衛隊国賓等空輸隊・田尻祐介陸将補:「この重要な任務に就くことを誇りとし、日本国自衛隊の代表であるとの自覚と高い規律心を持って行動してもらいたい」
14日午前、全国各地から集められた数十機の「CH-47」や「UH-60」などのヘリコプターや航空機が中部国際空港に到着しました。部隊は、専用機で到着するサミット参加国の要人らを会場まで運ぶ予定です。来週にも本格的な準備訓練に入り、26日からの伊勢志摩サミットに備えます。このほかに、防衛省は早期警戒管制機に加え、護衛艦なども数隻、周辺に配置し、テロ対策などのため監視活動にあたる方針です。
熊本地震が発生したのは4月14日。この頃にCH-47は運用が中止されていて、10機しか災害派遣に投入できなかったということです。
熊本地震で自衛隊行動命令が出たのは16日。輸送ヘリコプターはここから投入開始です。
防衛省の資料によると、ヘリコプター部隊では陸自の木更津の第1ヘリコプター団、相模原の第12ヘリコプター隊、空自の三沢ヘリコプター空輸隊、春日ヘリコプター空輸隊が投入されました。
平成26年の中国四国防衛局の資料では、第1ヘリコプター団のCH-47保有数は30機。第12ヘリコプター隊は10機。三沢ヘリコプター空輸隊、春日ヘリコプター空輸隊はそれぞれ数機です。
西部方面隊ヘリコプター隊にはCH-47が10機ありますが、出動命令は出されていません。当サイトで、なぜここのCH-47を使わないのかと疑問を提示しました。南阿蘇村に物資を運ぶのに最適の位置にある部隊だからです。この部隊のCH-47が点検中で動けないので、米軍のオスプレイを使ったというのが防衛省の言い分でしょう。
防衛省の資料に最初にヘリコプター部隊の名前が出たのが19日。「第」1、「 第12」、「三沢」の名前が見えます。20日には「春日」もこれらに加わりました。5月11日まで、これら4つの部隊が現地に派遣されていました。
そこから1ヶ月間足らずで、サミットのVIP空輸用に数十機の航空機を集めたとのこと。機種の内訳は分かりませんが、ニュース映像では少なくとも5機のCH-47が確認できます。13日の防衛省の発表では、要人空輸に使われるCH-47はVIP仕様です。VIP仕様だと、前向き2名掛けシートに最大10名が座れ、横の通常の座席には10名が座れます。各国の代表団が1機に乗っても最低7機は必要ですが、空輸隊が数十機なら一カ国が数機に分乗するのでしょう。
熊本地震に10機しか派遣できず、サミットには数十機が揃うのは疑問です。タイミングよく修理が完了したというのでしょうか?。
「翼を回転させる部分近く」って、どの部品でしょう?。「近く」だから「翼を回転させる部分」そのものではないということですよね。それがそんなに点検に時間がかかるのでしょうか?。この説明では飛行に直接関係ある問題かどうかすら分かりません。
Ch-47をVIP仕様にするため、椅子を取り付ける関係で、思うように救援活動にヘリコプターを投入できなかったということではないのかという疑問が払拭できません。
また、飛行停止を当時、公表できなかったのは、防衛力が落ちている現状を外国に知られる訳にはいかなかったからだとの意見が出ていますが、これは完全な誤りです。
米軍では軍用機の飛行停止は公表する案件です。当サイトでも、そういう事例を何度も紹介しています。というか、自衛隊もかつては公表していたはずです。
2008年に、アリゾナ州のデヴィス・モンサン空軍基地のA-10地上攻撃機34機の翼に亀裂が発見されました。そのうち1機は飛行可能とされます。その他の47機には問題が見つかりませんでした。全世界で400機のA-10が使われていて、130機が飛行停止処分となったということです。(関連記事はこちら)
2007年にF-15戦闘機が空中分解して墜落した事件が起き、胴体の部品に亀裂が入ったのが原因だと判明しました。日本の嘉手納基地に配備されていた機体2機にも問題が見つかり、これを含めて8機に亀裂が見つかりました。航空自衛隊も同型機200機を調査しましたが、問題は見つかりませんでした。(関連記事はこちら 1・2・3)
戦闘力に直接関係する地上攻撃機、戦闘機の飛行停止を公表できて、直接的に戦闘力と関係しない輸送ヘリコプターでは公表できないというのは、明らかに不自然な説明です。納税者に対する報告義務も怠っていると考えなければなりません。
「何でも秘密の自衛隊」の悪癖は、自らにブーメランとなって戻ってくるのです。米軍は回収にかかる費用も公開し、それが当たり前に報道されているのです。
防衛省がさらに情報を公開して疑問を払拭しない限り、サミットの空輸のために熊本地震の支援が手控えられたとの判断を下すしかありません。
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