「The Sentry」報告書 キール大統領(3)
「The Sentry」報告書のキール大統領に関する部分の日本語訳の第3回目です。今回紹介するのは22〜26ページです。(報告書の原文はこちら)
バシリ少将とT-ALFA社
- 大統領夫人の兄弟、グレゴリー・バシリ・デミトリー少将(Gen. Gregory Vasili Dimitry)は兄弟ビジネス帝国の中心点にいる。
- 2013年12月、南スーダン内戦が発生した直後、ブルームバーグでバシリ少将は大統領の親戚で、上ナイル州(Upper Nile state)メルト郡(Melut)のパロチ油田(Paloch)を守る油田防護部隊指揮官と報じられた。
- 南スーダンの国家予算上、政府軍少将の年俸は20,000ドル未満。
報道はバシリが現政府軍参謀長、ポール・マロン・アワン大将(Gen. Paul Malong Awan)を含めた政府当局者と共に、北バハル・アル・ガザール州(Northern Bahr el Ghazal state)の私営農場に関与してきたことを示す。
- 書類はバシリと彼の親族が広範な分野で営業するビジネスの株式を保有することを示す。
- バシリは「South Sudan Commercial Bank」の株式20%を保有する。
- 2015年8月13日付けの書類は、バシリは「Viva Nile Casino Co. Ltd.」の株式31%を持ち、残りの株式を中国人ビジネスマン5人が保有することを示す。
- 彼はさらに「Car Parking Management」と「Automatic Systems Limited」、「Petroleum Products Delivery Co. Ltd」の南スーダン人ビジネスマン数名と共に保有する。
- バシリ家のメンバーに結びつく「T-ALFA Investments」は特筆すべき商取引に関与してきた。
- 2015年の企業登記書類は、バシリ少将とマリー・エーヤン・バシリ(Mary Ayen Vasili)が、この会社の株式をそれぞれ26%と30%保有することを示す。(マリー・エーヤン・バシリは大統領夫人のマリー・エーヤン・マヤディット(Mary Ayen Mayardit)の旧姓だが、同一人物かは不明)
- 「T-Alfa Investments」は南スーダンで最も悪名高い汚職スキャンダルの一つ「Dura Saga」で南スーダンの商工会議所により関連づけられた数十社の一つ。(「Dura」はソルガム(モロコシ)のこと)
- 南スーダンが自治で、まだ完全な独立をしていなかった2008年に表面化したスキャンダルは、ソルガムの輸入と配送の数十社との契約で、20億ドル以上の所在に関して、会計検査官が広範な不正を明らかにした。
- この活動は国の穀物不足を補うことを意図したが、少量のソルガムしか到着せず、僅かな穀物倉庫しか建設されていない。
- 2008年の会計報告と報道によれば、1億ドルが進展の中で横領された。
- 2010年9月12日、ベンジャミン・ボル・メル(Benjamin Bol Mel)は戦略的穀物備蓄のために、ソルガムとトウモロコシを契約した企業多数に支払いを求める書簡を出した。
- 商工会議所議長の立場でボル・メルは、そうすることがビジネス界へ失われた流動性資産を注入し、我々のメンバーのビジネスを通常の稼働レベルに戻ると主張した。
- 多くの企業が経済的価値を生まなかった穀物を、政府が補償する必要があるとして、ボル・メルはこれらの企業の負債の一部を帳消しにするよう求めた。
- 書簡の添付物は、特定の量の穀物を配送する契約をした企業のリスト、それらの政府への負債額。負債の下方調整勧告の一覧だった。
- 書簡によれば、「T-Alfa for Investment」はトウモロコシ30,000kgを4,200万南スーダン・ポンドで契約したが、ボル・メルは政府に支払う義務がアルものの90%以上が消え、400,000南スーダン・ポンド(100,000ドル以上)にあたるもののみが残ったと求めた。
- 「Dura Saga」はバシリ少将が2013年に同社の株式を得る前に起きたとはいえ、彼の娘の一人はこの期間に同社の株主と経営幹部であった。
- 書類は「T-ALFA」が南スーダン軍の燃料供給者としてビジネスをしていることを示す。
- 会社の安定について書き、バシリの署名がある2012年の「T-ALFA 」の取締役会議のメモは、取締役会議が南スーダンの街ウイニーク(Wunyiik)への南スーダン軍の提供物の配送プロセスを議論したことを記録した。
- さらに取締役会議は南スーダン軍の新しい提供物について知らされ、調達を先へ進める事務プロセスと調達契約の通りに時間内に配送することを命じた。
- あるレポートは「同社はガスの大半を政府軍へ供給する責任を負う」と書いた。
- この時期、バシリは政府軍の高官を務めた。
- 「T-ALFA Investments」はマレーシアの国営石油会社で、南スーダンの石油分野の主役である「Petronas」との特筆すべき商取引に関与した。
2012年9月27日、南スーダンで法人化された「Petal Petroleum」は当初「T-ALFA Investments」と「Petronas Marketing Ventures Limited: PMVL」が所有するジョイント・ベンチャーで、「Petronas」が補助的に石油生産マーケティングと小売りの管理を負った。
「Petal」は「Petronas International Corporation」の正式な子会社だったと2013年から2015年の年次報告書に名前がある。
- 2015年4月8日付の株式増資・取得合意書によれば、「T-ALFA Investments」は「Petronas International Corporation Limited」から25,000ユーロ(27,500ドル)で「PMVL」の全株式資本を購入した。
同社を購入するために使われた資本は「Maybank International」のラブアン支店(Labuan・マレーシアの連邦直轄領の一つ。南シナ海上の島)で「Commerzbank」のコルレス口座を経由して転送された。
- つまり、内戦中に、国営油田に責任を負っていた将軍を含んだ大統領の親戚数名により、部分的に所有された会社が 、外国の石油会社とジョイントベンチャーを組み、その子会社を25,000ユーロで獲得したことになる。
- 「Petronas Marketing Ventures Limited」は2015年5月に「Gregas Marketing Ventures Limited」と社名変更した。
- キール家、バシリ家の商業上の利益は交差している。
- 南スーダン独立直後に起業した「Vasilico Investments」の株式は、マナット・キール(Manut Kiir)とマヤー・キール(Mayar Kiir)とグレゴリー・バシリの家族2人と等しく分けられた。
- 2010年7月の時点で、表面上外国為替に関与する南スーダン企業「Ayen Model Forex」の株主はマナット・キール、アノック・キール(Anok Kiir)、バシリ少将と彼の家族多数が含まれる。
- 「Ayen Model Forex」と「Vasilico Investments」は、バシリ少将が支配する企業数社と共に、南スーダンで現在営業する「Ebony National Bank」の株主となった。
- キール家、バシリ家は共に、2ダースほどの石油、鉱山、建設、ギャンブル、銀行、航空、政府と軍隊の調達で営業する企業と利益を維持する。
これまでに訳した報告書の目次は以下のとおり。
概説
南スーダン内戦
キール大統領(1)
キール大統領(2)
以上でキール大統領に関する部分はすべてです。前回の記事にラビングトンのキールの邸宅の位置を示すkmzファイルを追加しました。次は、レイク・マシャルです。
多数の企業を支配し、政治と軍事も支配したら、間違いなく独裁政権が誕生します。特に、人口1千万人程度の国では、こういう無茶はむずかしくありません。
これほどの活動をするための資金が国際社会が支援した資金から流用されていると推測することは容易です。日本の外務省はただちに支援の方針を見直すべきです。国連の要請で資金を拠出するだけではなく、南スーダン政府に説明責任を求めていくべきです。
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