監視団体によるF-35計画報告(2)

2019.3.27


飛べないジェット戦闘機

 航空機の戦闘準備の最も重要な基準は「完全任務能力」率です。これは完全に機能する、劣化のない機材システム(フライトコントロールとエンジン)、電子任務システム(レーダー、電子戦システム、コンピューター等)、武器使用能力を持つ航空機のパーセンテージで、F-35にとって特に重要な基準です。2017年のDOT&E報告は、F-35飛行隊全体にわたって26%の完全任務能力率を示します。しかし、2018年の報告はこの率への言及がなく、2018年の率がどうだったかを知るのは不可能です。 (図表はこちら 図表のソースはこちら

 POGOが入手した海軍の書面は問題が存続し、海兵隊のF-35Bと海軍のF-35Cは2018年に前年よりもっと悪い数字を示したことを示します。F-35Bの完全任務能力率は2017年10月の23%から2018年6月の12.9%へ落ち、F-35Cは2016年10月の12%から2017年12月の0%へ急落し、2018年を通じて一桁のままです。

 海軍と海兵隊の低い完全任務能力率が継続していることと2017年以降、計画全体がわずかしか改善していないことに基づくと、全飛行隊の完全任務能力率は、ジム・マティス元国防長官(James Mattis)が設定した80%の目標率を遥かに下回りそうです。

 海軍の完全任務能力率に関するPOGOの質問に答えて、統合計画部はF-35の飛行隊全体の高い「任務能力」率、どのくらいの頻度で航空機が配属された任務の少なくとも一つを実行できるかを示す、厳密ではなく実用的ではない基準を強調しました。同部はスペアパーツの不足を利用可能性に影響する最大の要素として確認もしました。ごく僅かのF-35しか、現在や近未来に、最も必要とされるときに戦闘のために準備されないでしょう。

現在や近い未来に、最も必要とされるときに戦闘の準備ができているF-35はあまりにも少数のようです。

 どれだけ多くの航空機が実際に飛べるのかをいうためには、第2の基準、出撃発生率を必要とします。これは飛行隊全体の中で各戦闘機が一日に何回飛ぶかです。2018年のDOT&Eの報告はそれに言及しません。

 POGOが2017年の報告から計算した三種類のF-35の飛行隊全体の出撃率は極度に低く、一日あたり0.3と0.4出撃の間でした。砂漠の嵐作戦の間、F-15とF-16を含む前線の戦闘機は平均で一日に少なくとも1回の出撃をして、A-10飛行隊は平均で一日あたり1.4%でした。最近の中東の戦闘派遣の圧力の下ですら、F-35の率は改善していません。飛行隊長の声明によれば、USSエセックス艦載の6機のF-35Bは中東の50余日で100回を超える飛行をしました。言い替えるなら、各F-35Bは一日あたり3分の1の出撃をし、彼らが長期間の戦闘の中、平均で三日に一度飛んだことを意味します。

謎に包まれたF-35の戦闘性能

 2018年の報告は大半のF-35の進行中の試験を省いています。F-35統合計画部は大量の設計不備が未処理なのに、見たところ恣意的な動きの中で2018年4月にシステム・デザイン/開発段階を終えました。国防総省は現在、個々のシステム機能が契約上の仕様に合致しているかを調べるエンジニアの試験である開発試験から、戦闘の必要性に合致していないことが多い、単に契約やエンジニアリング設計仕様に合致しているかということではなく、すべての航空機が実戦の準備ができて契約上の仕様であるかどうかを調べる軍の戦闘ユーザーの試験である作戦試験へと移行しています。

 特に、報告は2018年に完了した2つの予備の初期作戦試験・評価情報の評価事象の情報や結果を提供しません。その両方は限定された戦闘のリアリズム、アラスカに配置するF-35の寒冷気象試験と議会に求められたF-35とA-10の間での近接航空支援戦闘効果の性能比較飛行の初回に関係しました。

 国防総省の性能比較飛行の報告における情報と透明性の欠如は、特にこれらの試験の実行における誤った管理、偏見、関心の対立についてのPOGOの調査を考慮に入れると、とりわけ不安です。試験結果とA-10の未来は、航空戦力の必要に気がつくかもしれない、すべての陸軍兵士と海兵隊員への大きな懸念となるべきです。

未だに真っ直ぐに撃てないF-35

 詳細のほぼ全部はすでに過去数年に報告された実際に古い結果であるものの、報告は25mm砲の開発試験に関するいくつかの詳細を提供します。機銃掃射は兵士が接近した敵の危険にさられれるとき、攻撃する敵が民間陣に近いとき、ほぼ常に爆弾やミサイルよりもよりよい選択であるため、砲は近接航空支援でとても重要です。

 報告は3基のF-35の試作砲それぞれの今年と過去数年間の試験結果の組み合わせを含みますが、最も重要な結果はF-35Aが関係します。F-35計画のほとんどの局面と同じく、各型の形状の違いのためですが、F-35A用の内蔵型砲、海兵隊のF-35Bと海軍のF-35C用の220発装填の下部装着型のガンポッドと、3種の軍仕様の航空機、3種の異なる砲があるために、ガンポッドは互換性がありません。DOT&Eは開発飛行試験の少ないサンプルに基づいて、海兵隊と海軍のガンポッドの試作品はエンジニアリング精度仕様を満たしていると報告します。

 対象的に、空軍のF-35Aの内蔵型の砲は、過去数年にみるように、砲はパイロットがヘルメットの中に投影されるキューを用いて狙ったときに、標的の遠く、右側を撃ち、試験の間に不正確さを示し続けます。ヘルメットの照準ソフトウェアの調整はキューを砲弾の着弾地点に合うように修正できるようにすべきですが、少なくとも2年間の期間で繰り返された試みは失敗しています。調査官たちは2017年に最初に砲の取り付けにズレを発見し、2018年の報告によると「 F-35Aそれぞれの砲の本当の調整は知られていません」。

多くの地上兵は、彼らの位置に近い敵の攻撃目標に対して安全に攻撃するために、彼らがA-10に対してするようにF-35を信用しようとすることはなさそうです。

 試験計画の不適切さが少なからず関係して、依然として戦闘において遭遇した本当の攻撃目標に対する砲の弾薬の有効性についてその他の疑問が残ります。開発試験段階は3種の弾薬、訓練用のPGU-23、徹甲高性能焼夷弾のPGU-47、徹甲フランジブル弾のPGU-48を試験しました。焼夷弾は遅れて標的の中で起爆する前に薄い装甲板を貫通するように設計されるため、主に軽装甲に対して用いられます。最後のは薄い装甲の攻撃目標を貫通して穴を開け、燃料や貯蔵した弾薬を貫通した時に2番目の爆発をする、非伝統的な、非爆発の破片弾です。少数の旧式の車両、旧式の航空機、合板のシルエット・ダミーに対する今日までの弾薬の実弾射撃有効性試験は、どれも兵士が遭遇する大半の共通する脅威に似ていません。

 砲と弾薬の飛行試験はさらに制限されています。報告によると、2018年7月を通じてF-35Aの対地機銃掃射試験任務はたった19回で、F-35Aがたった182発しか搭載しないために(比較してA-10の30mm砲は1,350発を搭載)その中で航空機は約70回の上空通過で各50発、3種類の弾薬で約3,400発を発射しました。弾薬の効果性についての有益なデータを収集するために、射撃飛行試験は少なくとも3つの接近角度と3つの開けた距離を網羅する必要があります。報告は試験計画の詳細に光をあてませんが、素朴な算数はもし評価する人がすべて適切なシナリオでそれぞれの弾薬を試験した場合、適切に性能を特定するために必要なデータの総量に及ばない、それぞれの型の弾薬ごとに1〜2のデータのセットを持つことを示します。

 報告の中に、ずっと多くの砲の有効性の試験があるであろうことや、現実的な標的と上空通過の数でA-10の30mm砲とF-35Aの25mm砲の有効性を比較するために十分なものがなにかあるかを示すものはありません。

 F-35は交換される予定になっている航空機の戦闘性能に相当するか超えることになっています。F-35Aは近接航空支援においてA-10と最終的に交換されることになっています。エンジニアがF-35Aの砲が真っ直ぐに撃てて、試験においてこれを決定的に示せるようになるまで、多くの地上兵が彼らの位置に近い敵攻撃目標に対して安全に攻撃するために彼らがA-10にするようにF-35を信頼しようとすることはなさそうです。そして、おそらくより少数の者がそれにも関わらずA-10が搭載できる1,350発の30mm砲弾のかわりに、F-35の182発の25mm砲弾に彼らの命を託そうとします。

(続く)


「監視団体によるF-35計画報告(1)」はこちら
「監視団体によるF-35計画報告(3)」はこちら
「監視団体によるF-35計画報告(4)」はこちら
「監視団体によるF-35計画報告(5)」はこちら
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