先に、アフガニスタン西部・ヘラート州のアジザバッド村(Azizabad)で、8月22日に行われた空爆で、90人以上の民間人が死亡した可能性がある事件を紹介しました。military.comによれば、米軍が再調査の結果、より多くの犠牲があったことを認めました。(前の記事はこちら。1・2・3・4)
空爆から数日後、写真とビデオにより、モスクの外に並べられた、子供10人を含む30〜40人の遺体の映像が確認され、2度目の調査が始まりました。新しい報告書では、民間人の数はそのままですが、20人近くの武装勢力が死亡したとしています。最初の報告では、武装勢力35人が死亡したとされていました。アフガン内務大臣ゼメリ・バシャリ(Zemeri Bashary)は、新しい報告書はまだ読んでいないけども、アフガン政府は初期の調査結果の立場であると述べました。アフガン政府の調査は、空爆から数日後に行われ、子供60人を含む90人の民間人が死亡したとしています。
まだ、初期の調査とは多くの隔たりがあり、これが真相と信じるには疑問が残ります。おそらく、米軍には映像以外に手がかりがないのです。詳細に映像を確認し、何人分の遺体が写っているかを数えるのが関の山なのでしょう。そして、民間人と武装勢力の死体を区別していきます。映像に映っていない遺体は数えようがなく、結果として、死者の数は実際よりも小さくなる可能性の方が高くなります。これ以上、調査は進まないでしょう。戦争では、民間人と軍を分離しなければならないのですが、対テロ戦ではその区別は困難です。しかし、米軍はもっと注意を払うべきです。居住地域に対して空爆を行うのは止めるべきでしょう。
アフガン政府はタリバンとの和平を狙っており、イギリスもそれを追認しています。アメリカも同調しています。以前から指摘しているように、テロ組織は闘争を止めることを条件に合法化される傾向にあり、タリバンもその例に倣う可能性が高まっています。アルカイダもそうなる可能性があります。中東全域にイスラム国を建設するというアルカイダの理想が認められることはないでしょうが、より穏健な形に妥協する場合、その選択肢が選ばれることになります。この変化について、国内メディアはまだ有効な報道を行っていません。国会で新テロ対策法が審議入りする見込みであることもあり、大手メディアは与党に配慮して、アフガンの現状を積極的に報じないかも知れません。もっとも、日本人にとって、アフガンがどうであれ、関心がないのかも知れません。それよりは、早く洋上給油の継続を決めて、アメリカとのパイプを守った方がよいと考えるのかも知れません。