「The Sentry」報告書 ポール・マロン・アワン大将(1)

2016.9.28


 「The Sentry」報告書の南スーダン政府軍参謀長、ポール・マロン・アワン大将(Gen. Paul Malong Awan)に関する部分の日本語訳です。今回紹介するのは34〜37ページです。(報告書の原文はこちら

ポール・マロン・アワン大将

  • ポール・マロン・アワン大将は南スーダンで苦しむ厖大な人間のアーキテクトだ。
  • 国連とアフリカ連合の報告書、消息筋多数の説明は、マロンが2013年12月にジュバで大量の殺戮を行ったとされる民兵マシアン・エニヨア(Mathiang Anyoor)を徴用した責任があると結論した。
  • 2014年3月、内戦開始の4カ月後、マロンは参謀長として、ジェームズ・ホス・マイ大将(Gen. James Hoth Mai)の後を継ぎ、正式に軍隊に関してさらに増えた権威を与えられた。
  • 国連専門家委員会は、マロンとSPLAの上級将官の小グループが民間人を標的にした、国際人権法に違反する軍事作戦を命令したか、認識していたという、明白で納得できる証拠を見出した。
  • マロンは南スーダンでの大量の残虐行為で果たした役割の責任を避けられない。
  • 2015年9月、アメリカは安保理にマロンに1カ月前の停戦合意違反で制裁を科すよう提案したが、ロシアとアンゴラに反対された。
  • マロンも莫大な富を溜め込み、その大半は南スーダン国外にある。
  • 内戦中、通貨急騰前の為替レートで、マロンは年俸約45,000ドルの給与を得ていた。

権力と金

  • マロンは南スーダン独立の最後の十年間で突出した。
  • マロンは賢明な軍事戦略家の評価を得た。
  • 北南戦争中、彼は北バハル・アル・ガザール州(Northern Bahr el Ghazal state)に拠点を築き、妻と牛を収集するのを好む一匹狼として知られた。
  • 彼は個人的に北バハル・アル・ガザール州の戦争経済に関わり、「the Review of African Political Economy」の主筆アナリストの2016年支出報告によると、そこから大きな利益を得た。
  • 「マロンは彼の出身地(北アウェル郡(Aweil North)、中央アウェル郡(Aweil Centre)等)の異なるコミュニティから女性を集めるために兵士を送り、彼のところに連れてこさせた。
  • マロンにはいま、妻80人と子供100人以上がいるとされ、北バハル・アル・ガザール州のほぼすべての氏族とつながりがある。
  • 南スーダンの独立後、マロンは北hバハル・アル・ガザール州の知事になった。
  • 南スーダンの大半で、彼は単に「キング・ポール」と呼ばれる。

  • マロンを十年以上知る情報筋は「キール大統領は望んでマロンを排除できない」と言う。「将軍はそれを理解している」。
  • 力で評価を確立したマロンは、寛大で人道主義者の人としてイメージを育てようとしているようだ。
  • 時折、彼は博愛の評判を強化するために、検問所で兵士に札束を渡す。
  • マロンの心酔者が作ったニュースレターは、マロンが「the South Sudan Women General Association」と「the SPLM Youth League」に車を寄付したと主張する。

  • マロンの子供数人は、広範なビジネス分野で営業するとみられる企業の株式を保有する。
  • 書類は彼の娘、セシラ・アチョル・マロン(Cecilia Achol Malong)が「Concrete Builders Construction Co. Ltd」の株式25%、 エリトリア人ビジネスマンとのジョイントベンチャー「Petroilin Services Co. Ltd.」の株式50%を保有することを示す。
  • マロンの息子、ガラン・ポール・マロン(Garang Paul Malong)も「East African Mokuano Contractor Company Ltd.」の株式40%、「Dex Rich Investment Holding」を30%、「Link Telecom Services Ltd」を8%を含め、株式多数を保有する。
  • ガランが株を持つ一社はキール家とマロン家間の利益の交点を反映する。
  • 記録はガランとシーク・キール(大統領の息子)が同時に「Nile Link Petroleum Co. Ltd」の株をそれぞれが保有することを示す。
  • この会社は同様に、数人の中国人、ジンバブエ人のビジネスマンとのジョイントベンチャー「Nile Link Group」の株50%を保有する。
  • 「Nile Link」の記録は、ガランが2015年6月26日の時点で、同社の株主を止めたことを示す。

ウガンダとケニヤの家

  • マロンはケニヤのナイロビとウガンダのカンパラにある豪華な別荘を含めて、南スーダン国外にいくつかの不動産を持っている。

  • ナイロビで、マロンの家族はナイアリ・エステート(Nyari Estate)の中の富裕層のゲーテッド・コミュニティに別荘を所有する。
  • 家は全面大理石の床、大階段、バルコニー多数、ゲストハウス、私道、大型プールを含む。
  • 家には大きな正門からしか入れない。
  • 家は高い塀と厚い垣根に囲まれ、誰かが敷地に6フィート以内に近寄ると警報が鳴る警報システムがある。
  • 常時、家とコミュニティへの入口を見張る地域の警備チームがある。
  • 可否価格の評価に基づくと、この家は約200万ドルの価値がある。
  • 3つの別々の情報筋はマロンがこの家を所有しているといい、マロン家は数年前にこの家を150万ドルで手に入れたという。
  • 権利証書に載っている名前は「アジョク・ウォル・アタク・デン(Ajok Wol Atak Deng)」。
  • これはマロンの妻の一人の名前でもあり、彼女は現在、南スーダン議会の議員を務めている。
  • 調査員が家を訪問した時、新型BMWのSUV3台を含めた高級車5台があった。
  • 記録はこれらの高級車が「ポール・マロン・アワン」の名前で登録されていることを示す。
  • マロンの子供数人はこの別荘の中と正面で自分自身を撮影した写真を投稿した。

  • マロンはウガンダでも大型の豪華な家を2軒持っている。
  • 家の一つはカンパラ(Kampala)とエンテベ(Entebbe)の中間、カウク・ビワレンガ線(Kawuku-Bwerenga Road)を離れたところ、壁に囲まれた施設の中にある。
  • 2012年に建てられ、二階建ての家は、大きな装飾を施した窓があり、650平方メートルを優に越えるとみえる巨大な薔薇色に塗られた屋敷である。
  • 内部は広大で上品、よく手入れされ、マロン大将の肖像画が至る所に掲げられている。
  • 調査員が訪問した時、大型バスと車4台(メルでセスベンツを含む)が施設内にあった。

  • マロンのウガンダの二番目の家は地中海スタイルの別荘で、2013年後半から2014年前半に建てられた。
  • カンパラ南部の富裕層の地域、バング(Bungu)のナンジャラ線(Nanjara Road)の外れにある。
  • 玉石が敷かれた通りの最後に壁に囲まれた施設の中にあり、二階建ての家は557平方メートルを優に越え、入り口に大きな支柱が並び、少なくとも3つのバルコニーがある。

 これまでに訳した報告書の目次は以下のとおり。

 概説
 南スーダン内戦
 キール大統領(1)
 キール大統領(2)
 キール大統領(3)
 レイク・マシャル

 こうして見ると、キール大統領がまだしも可愛らしいことが分かりますね。マロン大将の方が権力に対してどん欲のようです。

 自分の権力を増すために、妻を集めて、コミュニティを支配するなんて、異常な行動としか思えません。地域の独占とでもいうべき行動で、他の地域でも類似例を知りません。

 ナイアリ・エステートの不動産の宣伝用と思われるCG映像を見つけました。Google Earthで見ても、ここはプール付きの豪華な家が並んでいることが分かります。

 


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