大統領の命令を疑えと下院議員が主張

2020.1.13



 military.comに よれば、海兵隊将校としてイラクで任務についた間に青銅星章を受勲した政治家はドナルド・トランプ大統領 (President Donald Trump)の外交政策を「方向が定まらない」と批判し、現役将校に最高指揮官からの命令に疑問を持ち、それが非合法ならそれらに従うのを拒否するよう求めました。

 マサチューセッツ州選出の民主党議員であり、8月に立候補をやめた元大統領候補者のセス・モルトン下院議員(Rep. Seth Moulton)は、トランプが得意げに国民に演説して、イランは戦争を手控えるようだと発表した翌日、木曜日に大西洋評議会での演説で意見を述べました。

 1月3日、アメリカのMQ-9「ラプター」がイランのクッズ部隊の指揮官、カシム・スレイマニ少将(Maj. Gen. Qasem Soleimani)に対して命を奪う空爆を行い、1月7日にイランはイラクの基地の2ヶ所への、装備と建物に損害を与えながらも、米兵とイラク兵は負傷させなかった弾道 ミサイルの攻撃で報復しました。

 モルトン議員は暗殺を余儀なくさせた、スレイマニが計画した「差し迫った攻撃」と当局が呼んでいるものに関する、大統領が 議会へ送った法的な通知を機密開示して、公表するようトランプに要請しました。

 準備された意見によれば、「この攻撃が新しく、アメリカ人への差し迫った脅威を防いだのを示す情報があるとしても、私はま だそれを見ていない」とモルトンはいいました。「私は大統領がごまかし、偽の情報ではじめた戦争を戦いました。我々はこの政 権にその間違いを繰り返させることはできません」。

 国防総省は「差し迫っている」として提案された攻撃計画の説明で、ホワイトハウスと結びついています。マーク・エスパー国 防長官(Defense Secretary Mark Esper)は記者に、それがスレイマニが死んだときと何日間も離れていると説明するのは正確だったといいました。

 トランプの政策と決定に長い間、歯に衣を着せない批判者であるモルトンはスレイマニを殺す決断に、彼の死後数日間で、攻撃 の重大性が不透明だといい、懸念を公言しています。

 「私はこの男を追悼はしません。彼はイラクでの約600人のアメリカ人の死に直接の責任があります。その何人かは私の友人 でした」ともルトンは大西洋評議会の演説でいいました。「しかし、それはそれほど単純ではありません。彼が殺された夜にメッ セージを送ったすべての仲間の退役軍人は、誰も彼の死を喜びませんでした。彼らもですが、私は彼が生きているよりは死んだほ うがずっとよいと確信します。彼らは『ここで何が起きているのですか?』。さらに『どうか計画があると言ってください』と彼 らはいいました。悲しいことに、私はそれがある証拠を見ていません」。

 イランは「犠牲者ゼロの弾道ミサイル攻撃」で二カ国間の恨みを晴らしそうにないと、彼はつけ加えました。

 トランプ政権はイランに関して明確な政策を発展させ、中国を含めた超大国の脅威に焦点を合わせ直すことを必要とすると、モ ルトンはいいました。

 「そして、ここワシントンや海外で、指揮系統の中の我軍のこれらのメンバーは、この大統領が与えるすべての命令を注意深く 見てください」とモルトンはいいました。「米軍の名において行われたすべてのことを合法的にするのを確実にするのが我々の任 務で、その義務は私たちにかかっています。我々は世界中の我が軍将校に、合法的な命令、合法的な命令だけに従うと宣誓するた めに、新しい詳細な調査をもたらす機会があります」。

 合法的な命令の問題は、今月、紛争を激化させたらイランの文化遺産を破壊すると、国際法に抵触する行為をトランプが脅した ときに前面に出ました。大統領は最終的にこれらの脅迫から後退し、エスパー長官は米軍はそうした行為に関与せず、そうするよ う命じられると予想しなかったといいました。

 12月にトランプの弾劾に票を投じたモルトンは、2001年から2008年まで海兵隊に勤務しました。彼は2015年1月 に就任しました。

 元軍人らしい意見だといえます。トランプの外交政策に目的がないことは確かです。彼は思いつきでしか判断せず、何 でも自分の都合がよいように考えます。北朝鮮の金正恩と会談して、歴史的な進展を期待したものの、実際には何の変化も確認さ れていません。こんな調子です。

 さらには国際法に違反してイランの文化遺産を破壊すると、イスラム国みたいなことを主張する有様です。トランプは自分は大 統領だから、軍に何でも命令できると信じています。しかし、軍は憲法や国際法に違反する行為は行わず、そうした命令が出され ても、拒否できると考えています。テロリストへの拷問に関する統合参謀本部議長の議会答弁(関連記事はこ ちら)や、核兵器の使用命令に関する退役将軍の議会答弁(関連記事はこ ちら)で、それらは繰り返し明言されています。国防長官を務めたジム・マティスも、長官に就任する前に、トラン プに拷問は不要だと答えています。(関連記事はこち ら

 問題は、トランプの極端な自己中心的な性格です。規則がそうであっても、彼は自分の意見を押し通そうとします。そういう彼 のゴリ押しに出会ったとき、将校たちが的確な対応ができるかは疑問があります。軍人は命令に従うことに慣れているからです。

 また、合法であっても不的確な命令もまた存在します。一番困るのは、確実に拒否できるような明白な理由がない命令が出たと きです。スレイマニ暗殺がそういう事態にあたります。国際法上、自衛権は 重大な武力攻撃が発生した際だけしか認められていません。しかし、トランプ政権は「差し迫った脅威があった」として、自衛権 が成立すると判断しました。このように見解が分かれるような案件で、命令に従いやすい将校たちが適切に対応できるかは疑問で す。

 モルトン議員の懸念はこうしたことから来ていると、私は考えます。



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