military.comによれば、かなり前から兵士の間でクレームになっていた正式小銃「M4」に対策がなされることになりました。
このアップグレードには、より強力な銃身、利き手を選ばない操作、フルオートマチック射撃を含み、よりよい弾薬も加わります。
記事には、これを使った兵士たちの感想が書かれています。評判は非常によいのですが、銃身が5オンス(約141.7g)重たくなるようです。これはフルオート射撃の高い発射速度で射撃した時に銃身を安定するために必要です。ある兵士は重さは気にならないと言っています。一方で、フルオート射撃にすると、兵士はより多くの弾薬を持ち運ぶ必要があります。現在、兵士は戦闘に行くのに210発を持っていきます。これも基本的な荷物を多くすることで対応できると別の兵士は言います。しかし、フルオート射撃をM4小銃に加えることが間違いだという兵士もいます。「敵がやるように、兵士は狙うのを止め、銃を向けて、撃って、期待するだけになります」。
M855装弾が近距離で効力がないという不満に応え、軍は新しいM855A1装弾を用意しました。M855A1装弾は射程に関わらず、より強い阻止力(弾丸が命中した人を動けなくする力)を持つように設計されました。M855装弾は、近距離では真っ直ぐに飛び、効力を低下させます。弾頭が目標に命中したときに傾いていれば、弾頭はより早く壊れ、より致命的になります。M855A1装弾は旧弾よりもより一貫して壊れます。
500,000丁以上のM4小銃の改善は3つのフェーズに分割され、4〜5年かかります。新しいM4A1は最初に派遣の準備をしている部隊に配備されますが、必要なら銃とアップグレードキットをアフガニスタンに送ることができます。
M4小銃の問題は主に2点ありました。敵に当たってもダメージが少ないことと、装弾不良が起こりやすいことです。(関連記事1・2・3・4・5)
問題を解決するために、米軍は一番安価な改良方法を選んだようです。私は口径を大きくする方法が採用されるかと思っていました。しかし、正式小銃の改修に消極的な米軍らしい対策がなされました。実は、記事には「約50年間で最大の軍用銃のオーバーホール」と書かれているのですが、私にはやる気のなさしか見えません。
M4A1小銃はすでに存在する銃です。M4小銃との大きな違いは、フルオート射撃ができるところです。M4小銃は1度引き金を引くと弾が1発発射されるセミオートマチック射撃、同様に3発連続で発射されるバースト射撃のモードがありましたが、M4A1小銃は単発射撃とフルオート射撃ができます。新しいM4A1小銃はバースト射撃とフルオート射撃の両方ができるようです。
言うまでもありませんが、フルオート射撃はセミオート射撃、バースト射撃よりも命中精度が劣ります。反動で銃身が動き、照準が逸れるためです。単発、バースト射撃なら適宜照準を直せます。兵士が興奮状態になる戦闘では、フルオート射撃で弾を使い果たすことがあり、それを改善するためにバースト射撃が導入されました。今回、フルオート射撃が追加されたのは、銃への不安を隠すためとも思えます。危ないと思ったらフルオート射撃に切り替えて、弾を沢山ばらまけることで、兵士に安心感を与えるのです。それで命中精度が高まり、兵士がより多く生存できるようになるのとは無関係です。兵士が狙うのを止めるという懸念は当然です。武装勢力は、弾を沢山ばらまいて、アラーの神に命中を祈る「spray and pray」射法を使うといわれています。そういう低劣な戦技が定着するのを恐れる声が出るのは当然です。
M855A1装弾への更新は、弾頭が体内に入った時に壊れやすい「ダムダム弾」を使うことを禁じた国際法のグレーゾーンを狙ったようです。M855A1装弾はダムダム弾ではないものの、これまでの装弾よりは変形しやすいようです。ライフル弾が目標に斜めに突っ込むということは、つまり飛翔中に弾頭はバランスを崩し、斜めに回転しながら飛んでいるということです。これは遠距離では命中精度の低下につながるように思われますが、その辺は記事に書かれていません。目標に弾頭が斜めに突っ込むと、標的には正円ではなく、楕円のような跡がつきます。こういうのを「横転弾」といい、弾頭が狂うだけでなく、威力も損なわれるので、銃砲の世界では不良とみなされます。おそらく、横転弾ほど傾くことはないのでしょうが、将来的にこれが新しい問題になる可能性があることを憶えておくべきです。
さらに、弾頭しか改良されていないということは、装弾不良の問題が置き去りにされたことを示唆しているように思われます。新しい銃でも装弾不良が起こりやすいという問題が起きる可能性があることも記憶しておきましょう。