すでに起きている米軍関係の発砲事件に関する記事を2つ紹介します。
military.comによれば、司法省は、ワシントン近郊で発生している政府施設などへの連続発砲事件に20,000ドルの懸賞金を出しました。
FBIのワシントン支局は、逮捕と有罪判決につながる材料に対して懸賞金を発表しました。
記事の残りはすべて、すでに知られていることなので省略します。この事件については、過去の記事を参照してください(記事1・記事2)。
military.comによれば、昨年11月にフォート・フッド基地(Fort Hood)で乱射事件を起こした二ダル・マリク・ハサン少佐(Maj. Nidal Malik Hasan)について、法律の専門家は死刑を予測しています。この事件も過去の記事を参照してください。(記事1・記事2・記事3)
「この男を有罪にして、死刑にするのに抗し難い法的証拠があるように思われます」と元海兵隊の法務総監で、今はバージニア州の法律事務所「テューリー・リンクケイ(Tully Rinckey)」で働くヤンシー・エリス(Yancey Ellis)は言いました。「裁判は数週間か、1ヶ月かかるでしょう。しかし、結果はまったく明らかでしょう」。
検察官はこの裁判のための検察側の証拠を先月開示しました。事件の1周年に敬意を表して審問が停止されたために、弁護団はこの裁判の準備をするための追加の時間を持ちました。
軍法では検察官が死刑を求刑するためには、より重大な状況を証明しなければなりません。特に考察されるのは、1人以上の人が死んだかどうか、複数の被害者の命が危険にさらされたかですが、この事件ではどちらも明らかと思われる、とエリスは言いました。
元陸軍法務総監で、この法律事務所の長、グレック・リンクケイ(Greg Rinckey)は、ハサンが死刑になることに疑いはないと言いました。軍の陪審員は死刑を宣告するには全員一致に達する必要がありますが、2人の弁護士はこの事件を審理する公正な陪審員が、この結論に達しなければ驚くと言いました。
ワシントンの発砲事件は当初、犯人が特定できているかのような話でしたが、懸賞金を出したことで、捜査当局が犯人像をつかめていない様子が感じられます。
愉快犯の要素が強い事件ながら、やはり犯人がエスカレートするのが心配ですから、犯人像が分からないというのは不安ですし、海兵隊の施設が狙われたからといって、犯人が海兵隊員と推測したのは行き過ぎだったかも知れません。その後、沿岸警備隊の事務所が狙われたのは、自分は海兵隊員ではないという犯人からのメッセージかも知れません。
ハサン少佐の刑罰は、13人殺害、32人負傷という犯行の内容からして、死刑が存在する刑法制度の中では、特に疑問は浮かびません。死刑がない司法制度では、仮釈放のない終身刑です。
横道に逸れますが、この記事からまったく別のことを考えます。
記事の2人の弁護士が軍の法務部の出身者で、その責任者であったことに注意して下さい。軍法は憲法の下に作られていますが、刑法や民法とも違う、独立した法律です。米軍は独立して裁判を行う権限を持ち、刑務所も所有しています。
世界的には、こういう法体系が一般的ですが、ここから生まれる戦争文化というべきものに、我々は注目する必要があります。それらの方が兵器よりも、大きな影響力を持つこともあるのです。
先の2人の弁護士のように、軍の法務部で経験を極めれば、除隊後もビジネスで成功します。こうした人は社会的信用も高く、軍だけでなく、民間の分野でも強い影響力を持ちます。彼らの事務所のホームページを見れば分かりますが、代表者がテレビニュースでコメントするほど有名なのです。ハサン少佐の事件では極刑が予測され、そのコメントのために選ばれるわけです。政治に関しても、地元政治家の有力な献金者となり、その影響を及ぼしていきます。彼らは偶然的にそうなるのではなく、こうした道を意識的に選択するのです。こうした分野の存在を、我々は意識しなければなりません。
軍隊は戦闘ばかりをする組織ではありません。このように非戦闘部門は民間にも大きく関係します。このことを理解しないと、将来、日本が自衛隊の権限を強化する決断をした時に、民間に及ぼす影響を予測できません。
尖閣諸島の事件のビデオ漏洩事件における国民の反応を見ていると、このことは特に心配になります。