「The Sentry」報告書 ポール・マロン・アワン大将(2)
「The Sentry」報告書の南スーダン政府軍参謀長、ポール・マロン・アワン大将(Gen. Paul Malong Awan)に関する部分の日本語訳の第2回目です。今回紹介するのはマロン大将の義理の息子に関する部分で、38〜41ページです。(報告書の原文はこちら)
若き大君
ローレンス・ルアル・マロン・ヨル・ジュニア(Lawrence Lual Malong Yor Jr.)
- 自分を「若き大君」と「生涯頭がよい少年」と称するローレンス・ルアル・マロン・ヨル・ジュニアは、28歳の南アフリカのスバーグ(Johannesburg)に拠点を置く南スーダン人ビジネスマンで、マロンの推定継子。
- 彼は南スーダンで政府の最高官レベルのキール大統領、エーヤン大統領夫人、バシリ少将、マロン大将と共に写真を撮っている。
- 彼は1988年にマロンの故郷の州、バハル・アル・ガザール州(Bahr el Ghazal state)の州都、アウェイル(Aweil)に生まれた。
- マロン家に近い2つの情報筋は、ルアルの亡母は1990年代初期にルアルの実父が他界した後、マロンと結婚した。
- ルアルは幼児期に南スーダンを出て、ヨハネスブルグに定住するまで、ケニヤにいた。
- ルアルを知るその他の者たちは、彼がマロンの親戚だと述べた。
- 2016年8月の調査員との会話の中で、ルアルはマロンを父だと主張し、キール大統領を家族を超えた存在だと述べた。
- ルアルのソーシャルメディアへの投稿は、巨大な富みの印象を与える。
- 彼はプライベートジェットやファーストクラスで飛行中、異なる贅沢なスーツを着た写真数十枚を投稿した。「若き大君、ファーストクラスを楽しむ」との説明付き。
- 彼は調査員に、彼がビジネスをする外国人投資家たちがファーストクラスの費用を出していると述べた。
- 彼はラスベガスホテルの特別室の中で、自身を撮った写真、ビデオを投稿した。
- ルアルが投稿したもう一つの写真は、ロールスロイスの中にいるルアルを示し、ロールスロイスを所有する最初の南スーダン人だと主張する。
- ルアルは南スーダンへの投資を持ってくるという表向きの目標をもって、バングラデシュ、インド、中国を含めた世界中の国々を旅行している。
- 彼は南スーダンの天然資源の分野で特に活発なようだ。
- 彼は南スーダンで40億ドルの鉱山契約に関与したとソーシャルメディアで主張した。
- 2016年8月、調査員との会話の中で、これは外国企業が特定の鉱山への投資の価値とした額だと述べた。
- ルアルは鉱山分野への関与を主張し、石油、ダイヤモンド、金の採掘権を持つ会社に関わっていると述べた。
- 写真、ビデオ、企業情報はルアルの主張をいくらか裏づけているようにみえる。
- ルアルとつながりがある南スーダンで登記した企業「Goldstone Mining Co. Ltd」は、2015年7月に法人化された。
- 書類によれば、2016年3月の時点で、この会社の株式69%はシュロモ・ウルフ(Shlomo Wolf)という名前のイスラエル人ビジネスマンが所有していた。
- ルアイとジュバにおける彼の代理人の南スーダン人、マジョク・イェル・ウォル(Majok Yel Wol)は、この会社の株式をそれぞれ10%づつ保有している。
- 残りの株式11%は、パスポートで「知事夫人」となっている、セミラ・エーヤン・アルサエブ(Semira Ayen Althaeb)が保有する。
- ネットに投稿されたビデオ映像は、彼とゴールドストーンの仲間の責任者少なくとも2人がプロペラ機で南スーダンの鉱山を訪問することを示す。
- マジョク・イェル・ウォルとシュロモ・ウルフはどちらもビデオに登場する。
- フェイスブック上のもう一つの一連の写真は、プライベートジェットの外に駐車したSPLAのナンバープレートをつけたSUVと機内のルアイを示す。
- ルアイは2016年1月27日に法人化された「JPL Gold & Diamond Co. Ltd.」の株主であり、責任者でもある。
- その時点で、書類は「JPL」の最大の株主が、同社の株式49%を持つ南アフリカの民間人、フィリップ・エフロン(Phillip Ephron)だったことを示す。
- 残りの株はルアイ、シルバー・ラウテ・アデ(Silver Laute Adde)とムファフディ・フェルソソ・ジャクソン(Mphafudi Phelsoso Jackson)という前の南スーダン民間人に均等に分配された。
- コメントを求めると、アデは彼がルアイの会社を少なくとも1社を含めたいくつかの鉱山ビジネスに関与していると認めた。
- アデは「JPL」が鉱山・エネルギー省から、潜在的鉱床に関する南スーダンの地図とデータを得ていると述べたが、そうしたデータと地図を手に入れたプロセスに関するさらなる質問には応じなかった。
- ルアルはマロン大将とキール大統領が彼の鉱山ベンチャーに関与したとも主張した。
- 「私が鉱業を行うと、我々は地元企業を登記し、父と大統領が関与する」と彼は述べた。
- 後の会話で、ルアルはキール大統領とマロン大将の関与は南スーダン政府から必要なものを何でも迅速に処理することを伴うと主張した。
- 彼は投資家たちとキール大統領とマロン大将を含めた高官との会合を、投資家たちに圧力をかけるためにしばしば促進したとも主張した。
- しかし、マロン大将の息子としての身分から利益を得たかどうかを直接尋ねられると、否定した。
- 2012年の南スーダン鉱山法は、鉱物の探索と抽出は現行の法律による公開入札に基づいて配分されると義務づけている。「鉱山・エネルギー省は、競売価格が鉱物の迅速で有益な開発を促進するために最も促進しそうな入札の落札者を決めるために南スーダンの閣僚会議と共に活動する。その評価基準は、政府へ支払われる初期ボーナスの価格、入札者が提案する探索・採掘活動の有効性、過去の経験と専門知識へのアクセス、提案を行う入札者への財力、そして最後に、南スーダン国民への経済的向上への影響が含まれる。
- しかし、アデは2016年9月に調査員との会話で、この会社がどの公開入札にも参加せず、政府(特に鉱山・エネルギー省)を先に、それからコミュニティとの合意を構築したと述べた。彼はこれらの合意に関する質問についてのさらなる情報の要請には、彼らがそれを得た方法と同じく、応じなかった。
- 同様にルアルは、天然資源探索権を得るために正式な入札方法に参加することを要求されなかったと述べた。彼は、これは国の鉱物へのアクセスに競争が不足したためだと述べた。
- 採掘許可を得るために、公開入札や入札手続きがあったかを尋ねると「入札がなければ手続きはない」と彼は述べた。
- 「我々はどうであれ我々が望む利権を得た」。
これまでに訳した報告書の目次は以下のとおり。
概説
南スーダン内戦
キール大統領(1)
キール大統領(2)
キール大統領(3)
レイク・マシャル
ポール・マロン・アワン大将(1)
マロンはルアルを使って、自分たちのビジネスの手伝いをさせています。ルアルがべらべらと喋ってくれたおかげで、汚職の構図がかなり分かってきました。
キールやマロンはビジネスをする暇がないから、彼らの代理でルアルが動き回っているのです。
キール大統領やマロン大将は国の資源を自分たちのためだけに活用し、利益を得ているのです。第三世界でよく見られる構造です。かなり広範な汚職が存在すると考えざるを得ません。
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